ゼロベースWeb開発相談室でデザインとフィードバックについて相談してきた


先日、@zerobaseの石橋さんのご好意で、Web開発相談室に出演させて頂いた。素晴らしい夜でありました。無料動画と音声がアップされたので、死ぬほどお勧めです。凄く濃くて勉強になった。

Youtube動画はこちらから。通勤時間に聞けるPodcast版もあるよ。
(iPhoneのiTunesでzerobaseと検索すると楽に落とせるかも)

主なテーマはUIデザインとユーザフィードバックでした。特に、よいUIデザインをどう開発していくか。石橋さんは具体例を織り交ぜながら、最も重要な軸となる考え方も忘れないように話しくれるので、凄く分かりやすい。

なんというか、具体的な実践方法と、忘れてはいけない基本概念を抽象化しての説明を織り交ぜてくれる。本当にヤバい。こんなに濃密に深く学べる機会はなかなかない。

ちなみに、リーンスタートアップ的には最初に欲しい人がいるかを確認するのが重要なのですが、今回の話はどちらかと言えば、その後にどう製品をデザインしていくかといった話です。リーンスタートアップに興味ある人は、フィードバックループ構成したい時の、現実問題的なユーザの微妙な心理を話している後半の部分が必見だと思う。

ちなみに、ラリーキングっぽく肘をついて真剣に話を聞くというスタイルを意識したのだが、動画を見ると自分は相談側なのに非常に偉そうに写っている。すんません!

一応、僕が作っているLisgoを開発していく上での悩みを元に相談してるのだけど、サービス開発してる人なら誰でも役に立つ話ばかりだと思う。

Lisgoは自分が毎日使うユーザなので、どこが使いづらいか、どこに改善点があるかはかなり理解しやすい。でも、開発者だから機能の使い方が分かりやすいかどうかは分からない領域。自分は最初から使い方を知ってるからである。

つまり、周りの人に使ってもらって、横から観察するというユーザビリティテストが効果的になるけど、これも手軽に何回もできるわけじゃない。そういう、開発時間も必要なうえで、ユーザビリティもいかに洗練させるか。特に、いかに自分が気づかない部分に気づくか。

僕も頑張って本を読んで勉強したり実践で試行錯誤しているのだけど、実際には時間やコストのトレードオフがあり、なかなか教科書通りの事は全部できない。常に何を選択するかの日々がある。

石橋さんは、それも十分に踏まえて経験則から原理原則の応用の仕方を説明してくれるので、凄く負におちるというかなんというか。

詳しくは動画で見ると分かるのだけど、印象に残った部分を書いていきます。ちなみに、動画の最初は3分はLisgoの簡単な説明なのでスキップしても無問題。


ユーザビリティ・デザインの原理原則をインストールする (7分〜)

ユーザビリティ・テストはためになるが、そればかりやる時間もない。どう効率的に開発とのバランスを取るかというのが僕の相談だったのですが、結局はUIデザインの経験則としての知見を頭に入れるのが一番の近道と。

これだけ聞いたら当たり前じゃないかとみなさん思うかもしれないのですが、石橋さんが様々なよいUIデザインを作る具体例をぽんぽんと出してくれるので、「むむ。。こういう経験則をここまで深く知ったうえで他のUIを参考にしたり、自分のデザインを考えるのでは深みが違う。。」と圧倒される我輩が動画で観察できます。

もちろん原理原則を破る事も重要なのだけど、その場合も、自分のプロダクトはこういう理由でルールを破っているのでOKなんだ、という考えを持てるのと持てないのでは大きく違う。

そして、僕もアップルの純正アプリであるiPodやら、TweetBotやら、評判のよいUIデザインをいろいろ細かく参考にして勉強するのだけど、UIデザインの知見を知っているのと知らないのでは見える世界が違う。

ここで石橋さんは、「Defensive Design for the Web」など色々な本を紹介してくれた。アプリ開発でも原理は同じなのでもっと読まねばならぬ。ちなみにiPhoneだと「iPhneアプリ設計の極意」が凄くいい。ここでも、ルールとルールを破る時の解説がされていたのを思い出した。忘れるから何度も読もうと思った。

特に動画の該当部分を見ると重要な原則を例と一緒にいろいろレクチャーしてくれているので、とても濃密に学べると思う。


製品の問題をユーザは伝えられないから、観察が有効になる (32分〜)

上で書いたように、デザインの原理原則を頭に入れておくと、ユーザビリティテストするまでもない基本の事柄は先に潰しておける。ユーザビリティ・テストにもコストがかかるので。

でも、ルールを破るべきかどうか、ルール通りにしたものが果たしてよい結果に繋がるかはユーザを観察するしかない。いくら経験則を持っていても、自分の頭の中だけで考えると重いもよらない落とし穴に確実に落ちてしまう。

ユーザを観察するのがなぜ重要なのかという事を深い意味で語ってもらえたのだけど、自分にとって新鮮だったのは、「ユーザにどこが不便かを聞いても上手く伝えられる人は少ない」という部分。

「ユーザに欲しいものを聞いてもダメ」という事は分かっていたのだけど、「ユーザにどこが不便かを聞いても答えるのは難しい」についてはそこまで意識してなかった。

普段使っている様々な製品の使いにくい部分を的確に文句が言えるのは、結構訓練された人しかできない。なので、「どこが不便ですか?」は「どこが問題ですか?」よりましだし、「どうすればいいですか?」より遥かにましなんだけど、不便な部分を的確に教えてくれる人は少数派。これは肝に命じる事にしようと思う。

実際は不便なのに、使うのに慣れてくるとユーザは当たり前のように感じてきてしまい、本当の不便さに気づかなくなる。だからこそ、専門知識を持った人間の観察や意見が役に立つと言う事なのですね。


無意識にしていた反復に敏感になる(56分〜)

クライマックスに近づく部分で、衝撃の展開が訪れます。

自分がユーザで、自分が使いにくい部分をコツコツと修正していく作り方でLisgoは作っている。具体的な話になるけど、日本語と英語の記事をどちらも読むので、たびたびフォントの大きさを切り替えてたわけです。

それを切り替えるEditバーを手軽に出す機能をつけていたけど、この機能は大半のユーザにとっては優先度低いのではないかと思い、消すかどうか悩んでいると相談した時です。

すると、「フォントの切り替えは単純に自動化できるんじゃないの?」という単純な石橋さんのアンサー!

気づくと当たり前の事だったのですが、なぜか自分はまったく気づかなかったのです。なんと恥ずかしい。僕は、頻繁にフォントを切り替えるから、素早くフォントを切り替えられる便利な機能だぜ、オラオラこんなに早く切り替えられると得意げになってたのです。

でも、それは単純動作の繰り返しであり、何度も反復する動作は自動化するのがユーザビリティの原則だと言われました。恥ずかしいけど、なんというアハ体験!

思い起こしてみれば、何度も繰り返すうちに素早く操作ができるようになり、ルーチンワークとなり、無意識のうちに不便さを感じなくなってしまう落とし穴はたくさんの製品であると思うのですよ。反復が体に身に付けばつくほど人間はそれを意識しなくなると思う。

ちなみに、石橋さんは日本語と英語の記事を自動判別する技術的な考察もしっかりフォローしてくれた。(そういえば、これは面倒かなと思っていたのだった。)

また、何%の割合でルーチンワークとなり、どの割合で例外動作が発生するかを考え、ユーザがよくする一連の動作を自動化するかどうか、その時に応じて判断するためのフレームワークもホワイトボードで説明してくれるので、ここは必見。

興奮を隠して出来るだけ静かに聞こうと決めていたのですが、このへんではドーパミンが爆発している僕が動画では鑑賞できます。

この他にも、「熱心な人からライトなユーザまで、様々なレイヤーのユーザから、いかにユーザの負担を少なくしつつ、フィードバックを頂くか?」という難しいテーマについて。(40分〜)

また、ユーザに機能のOn,Offを選択させて設定項目を増やすのは出来る限り避けたいが、例外をもうけるかどうか悩んだ時の判断の仕方(1時間8分〜)など、サービス開発してる人なら絶対面白い話がたくさんあります。

一応記事にまとめるにあたって、印象に残った部分を3つだけまとめてみたんだけど、聞き直してみるとどこを聞いてもすごく勉強になるところばっかりなので、全部聞くのが絶対お勧めです。

この動画/音声はいろんな人に見てもらって、自分はこう思うとか、こうしてるとかコメントなどで教えて頂けたら嬉しい。石橋さん、このたびは本当にありがとうございました。

Web開発相談室に出演希望の方は@zerobaseまで。