【書評】The Blind Side マイケル・ルイス


拷問読書今週読んだ本で一番面白かった一冊、累計119冊目。

マネー・ボール」や「ライアーズポーカー」などで有名なマイケル・ルイスの本。2007年に発売され、アメリカでベストセラーになりながら日本語版が出てない。日本人には馴染みのないアメフト、それもカレッジフットボールを扱った内容だからだろうけど、アメリカでは今秋に映画化までする盛り上がりよう。

アメリカのアマゾンでやけに評価が高かったので洋書版を読んでみた。スポーツを題材にしているから英語も簡単で、アメフトの知識がほぼない自分でも十分楽しめました。むしろ、この本を読むと自然とアメフトに興味が出てくる。

本は大きく分けて2つのパートが混ざり合ってできている。ひとつはホームレスだったマイケル・オーアという少年が裕福なクリスチャンの夫婦に引き取られ、恵まれた体格と運動神経をいかしてカレッジフットボールで躍進していく話。もうひとつは、アメフトにおけるレフトタックルというポジションの進化、およびカレッジフットボールを取り巻く話。

悲惨な少年時代を過ごしたマイケルがNFLのスター候補にまで上り詰める話はもちろん面白いけど、自分はスター選手をなんとか確保しようとするカレッジフットボール界の話や、クオーターバックを守る選手達の動きを掘り下げたパートが一番楽しめた。

アメフトはチームスポーツ。パスを出すクオーターバックやボールをキャッチするレシーバーの華やかな動きの影で、タックルに来る選手をブロックしたりレシーバーが走る進路を開けるために大男がぶつかり合っている。

例えると、華やかなクオーターバックとレシーバーの周りで、明らかに極悪顔な100キロを超える大男達が押し合いへし合い、つかみ合いの大相撲を繰り広げているわけです。

こうした各自の綿密な動きがアメフトの魅力だと思うのですが、この本では特にクオーターバックを相手のタックルから守るラインの選手にスポットライトを当てている。右ききが多いクオーターバックの死角(Blind Side)である左からのタックルがレフトタックルと呼ばれるのですが、ここを守る選手が近年のアメフトではクオーターバックの次に重要なポジションとなっている。

クオーターバックの死角からタックルに来る相手選手は一番能力が高く、危険な選手。それを守るためには、体がでかいだけでなく、横への敏捷性、足の速さ、相手を受け止める手の長さや大きさなど、あらゆる素質を求められるためなかなか見つからない。

ラインの選手は平均で193センチ、140キロ以上と怪物達が多いのですが、その中で最も優れたアスリートのためのポジションというわけです。

人間ドラマとアメフトのパートがいいバランスで混ざりあっていて飽きない。スポーツ好きにはもちろん、アメフト好きにはたまらん本なのではないでしょうか。

こちらはマイケル・オーアのハイライト動画。アメフトに詳しくない自分はよく分からないのですが、外国人のコメントを読む限りでは、「相手を逃がさないフットワークがすげえ!」、「タックルされた後のバランスがヤバイ」とのこと。