【書評】波乱の時代


拷問読書今週1冊目、累計118冊目。20年近くアメリカ経済の司令塔として舵をふるってきた元FRB議長の回顧録。専門的な分野もあるにはあるが、歴代の大統領とのやりとりや、その時々の経済政策を語る話はスケールがでかくて単純に面白い。アメリカでベストセラーを記録した本。

音楽隊で働いていた軍隊時代から始まり、大学で金融関係の才能を発揮して経済雑誌の執筆を勤め、金融のコンサルティング業をやるといった回顧録を細かく話している。

途中からは、経済のことならグリーンスパンが最も詳しいとまで言われるようになり、数々の歴代大統領の経済顧問など、世界経済界のトップを走り続けていった時代の裏話がいろいろ書いている。

例えば、一緒に働いた歴代大統領でもっとも頭が良かったのはニクソンとクリントンだったとか。ニクソンは抜群に頭がよかったが、マフィアのボスのように振る舞ったり、何に対しても反対意見を言う攻撃的な性格にどうしてもなじめなかったそうな。

また、クリントンに対しての賞賛も多く、様々な分野への理解や、人の話を真剣に聞く姿勢を常に表すといった政治家としての資質を評価している。それがあったからこそ、当時の秘書だったモニカ・ルインスキーとの不倫事件にはショックを受けたと書かれている。

「シークレットサービスがいつも一緒で、クリントンの様々な顧問達も常に入れ替わり立ち替わりする状況の中、不倫なんてできるわけない!」と当初は報道をまったく信用していなかったが、それが事実と分かると非常に失望したとか。

ここまで厳重な網をくぐり抜け、ちょめちょめしていたクリントンはある意味すごい。ケネディーはすごいプレイボーイで有名だったらしいけど、クリントンは一緒に働いていた同僚達からそういうふうには見られてなかったみたいですな。

ブッシュ政権に対しては批判的。ブッシュは公約として大幅な減税を打ち出していましたが、任期中の経済の状況において減税するのはどう考えても合理的でない状況になっていた。それでもブッシュは公約を守ることを優先して減税を押し通したことなどを批判している。

このへんを読んでいて、公約を守ることは重要なんだけど、それを固執するあまり、状況が変化した時に柔軟に動けなくなるのは難しい問題だなと感じました。政治家としての立場からは公約を守らないことは重大な汚点にはなるのだろうけど、経済の専門家からすると木を見て森を見ず写ってしまうんだろう。

まあ、そのへんのたてまえと現実的な方針のバランスをうまーくとるのが政治家の力量が問われるところなんだろうと思うけど、ブッシュはダメだったと。。「さらば、財務省」に書かれていたけど、小泉元首相は理想と現実のバランスを取るのが非常に上手かったとか。