【書評】正しく決める力


拷問読書今週5冊目。累計54冊目。著者は19年ほどBCGやアクセンチュアといった外資コンサル会社で働き、戦略グループ統括までしていた三谷宏治氏。三谷氏の「突破するアイデア力」という本が物凄く面白かったので、新しくでた本書も読んでみたらまたまた面白かった。

ちなみに「突破するアイデア力」は、日々の生活からどういった視点で学びがあるかといったことを、あらゆる角度から語っている本です。SF小説からだったり、旅からだったり、昔の建築物だったりいろいろな切り口で書かれています。そのどれもが深い視点まで掘り下げていて、その考えの深さに一気に引き込まれます。内容は著者のHPで公開されているのでタダで読むことができたりする。

話が飛びましたが、本書のテーマは大事な事を考え、話して、実行するというシンプルなもの。ただ、世の中の90パーセント以上の人はこれが出来てないと書いています。たいていは、思考がバラバラになり、話すと論点がズレ、何をするかを決めきれない。

これを正すには練習するしかない。その考え方、実行方法をシンプルに、難解な用語もまったくなく、中学生でも分かるように書かれています。でも、簡単に書かれているからといって内容も軽いというわけでもありません。簡単だけど難しいこと、それをどう克服するかに焦点が当てられています。

そのために必要なのは、「重要思考」、「Q&A力」、「喜捨法」の3つ。この中で特に重要なのが最初の重要思考。

●重要思考

このパートは本当にシンプル。何かをしたり、決めたりする時に、「それは大事なことか」と何度も自問するだけ。分かりやすい例でいえば、お金を節約したいと思った時にあれこれと節約方法を考えるのではなく、一番ウエイトが大きいものから考える。この場合は、毎日の食事代よりも、家賃であったり、大きな買い物といった形。

次にどの程度大事かを常にはかる。経験で判断すると判断を間違える。文化財修理のプロは感だけに頼らず、対象を詳細にX線、顕微鏡などで観察してどうするべきかを考えるようです。

●本書に書かれている意志決定クイズが面白い

乗っていた飛行機が雪原の中の湖に墜落。救命ボートに乗りながら、短時間で機体に残る貴重なアイテムのどれを確保するかを決める。初期の目的地までは30キロ。周りは低木と雪に覆われ、湖が点在し、それを川がつなぐ。風は強く、気温も零度を切る。

助けが来るのは2週間以降かもしれず、着ているのは冬物の普段着。この状況をどう切り抜けるか。機体に残るアイテムは様々。本、コンパス、寝袋、マッチ、テント、ハチミツ、水を綺麗にする浄水錠剤などなど。

10分間の間にどのアイテムを選ぶか、それはなぜかと考える。大事なことから「大戦略」、「効用」、「手段」で考えるというもの。簡単な思考の練習にもなる。考えかたのプロセス、解答例みたいなものは本書に書かれています。

何が一番大事か、それはなぜか。このシンプルな考え方の道筋が面白く、分かりやすく書かれている本。事例の話題もビジネス、災害派遣、学校教育、子育てまでと豊富で一気に引き込まれる文章です。昨晩はこの本が面白すぎて、気がついたら朝になっていました。

さっそく他のブログでも取り上げられていて、特に秀逸なのがこちらのブログ