【書評】希望を捨てる勇気


拷問読書

今週の1冊。累計131冊目。言いたいことをブログでガンガン言う暴れん坊経済学者、池田先生の本。出版社が考えたのか、タイトルもなかなかキャッチーであります。

基本的にブログで書かれていることがそのまま本になった印象。主張をかんたんに要約すると以下のようになります。

1解雇規制をなくし、労働力の流動化を高めろ。そしたら人的資源が最適配分される。

2少子化の日本が将来成長するには、個々人の生産性を高め、政府は起業家を応援しろ。

ほかにも細かいことは書かれているのですが、個人的に一番重要な主張はこの2つなんじゃないかと思っています。

1に関しては、解雇規制をなくせば企業はもっと労働者を雇いやすくなる。そして、労働者も転職がしやすくなり、自分にあった職場に行き着く可能性も高まる。そうすると、労働資源が最適配分されて生産性が高まる。といった感じです。

2に関しては、インフレ誘導とか、金融政策とか、小手先の政策では根本的な問題解決にはならない。国民一人一人が能力を高めて一人当たりの生産性を高めないと意味がないといった話です。

どちらもその通りだなあと思ってはいるのですが、特によく考えるのが1です。簡単に言えば、フリーランサー契約を当たり前にして、最低賃金規制なんてものをなくせば需要と供給のバランスが保たれるって話になる。

よく言われる反論として、それだと弱者を見殺しにすることになるという意見。優秀な人はよいけれど、完全な格差社会になっちゃうじゃないかと。自分の考えとしては、教育や再就職のチャンスを政府が手厚く保護して、その後の格差はあっても全然よいのじゃないかと思っております。スタート地点の格差、つまり教育の機会は平等に近づけて、その後は自由に競争されるのがいいかなと。

しかし、こういう社会だと生来の怠け者が困ります。あまり働くのが好きじゃない僕のような人です。いや、もちろん自分の夢中になったことはガンガンやるのですが、基本的に仕事が大好きだよっていう人だったり、競争大好きっていう人ばっかりじゃないと思う。

そういった人や、社会的弱者が好きなことに打ち込めるよう、最低限の生活を保障しようというベーシックインカムという制度が最近流行っている。とにかく仕事大好き人間はガンガン働いてガンガン稼いでもらって、そこから出る税金で弱者を保護しようと。予算確保が現実的にめちゃちゃ厳しいみたいだけど、夢のある話であります。

また、1の主張のように上手くはいかないっていう意見もある。「雇用の常識・本当に見えるウソ」に書かれていた一番印象に残っている部分がそこでした。この本によると、解雇規制をなくして雇用の流動性をなくせば、ニートやフリーターの親達が失業し、ニートやフリーターがますます困窮してしまうと書かれてた。

さらに、「アニマルスピリット」には市場原理の力を過信しすぎると失敗すると、ロシアの例を挙げて書かれていました。それまでの規制や慣習を無視して、いきなり規制をとっぱらって市場原理の動きに期待するのは無謀だと。

いろいろな意見を読んでいると、様子を見ながら段階的に実施するのはなんでも重要だなあと思いました。正直、どうすれば一番よいのかはなかなかわかりません。

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