【書評】ブラックスワン上・下


拷問読書 拷問読書今週2,3冊目。累計111,112冊目。前作「まぐれ」の続編。前作は自分にとっては衝撃的でした。少なくとも「まぐれ」を読んでからものの考え方が変わった。今までの考えをひっくり返してくれる本はなかなかない。凝り固まった頭をハンマーでたたき壊してくれるような本だった。

簡単に著者の主張を説明するとこんな感じです。今までずっと起こらなかった事態だからといって、明日も起こらないとは限らない。今まで見た白鳥が全部白だったから白鳥は白いものだと思っていても、明日に黒い白鳥が発見されればその前提はくつがえる。

過去の世界恐慌も人間は防げなかったし、金融工学が発達したと思っていても最近の同時不況が防げなかった。とにかく、未来が予測できると思ってはいけない。世界は死ぬほど複雑で、先のことになればなるほど予測の精度は絶望的に下がっていく。

つまり、長期的な予測なんて不可能だと。それが現実なのに、リスクを理解していると勘違いしている状態が一番危ない。そういう人たちは黒い白鳥にやられてしまう。

また、世の中での成功事例はほとんどがまぐれの産物であり、あとづけの解釈は意味がない。なぜなら、一握りの成功者の下には数限りない敗北者がいて、母数から考えると、その他の人々と同じようなことをしても成功する人は出てくるに決まっているから。

例えば、成功者のスティーブ・ジョブスのやり方がもてはやされているとする。彼の特徴は、独断的で、カリスマ性があり、顧客の意見を聞かず、菜食主義者であったとする。でも、ジョブスと同じような性格で同じようなやり方をしても成功しなかった人は大勢いる。ジョブスが成功できたのも運の要素が非常に強い。

黒い白鳥に対する著者であるタレブの対処方法はこんなもの。大きな影響が出そうなリスクには、それがどれだけ起こりそうになさそうでも被害を最小限に抑えられるようにしておく。逆に、被害が小さいリスクに関しては気にしない。積極的にリスクをとる。

黒い白鳥にはよいものもある。期待していなかったのに思わぬ幸運をもたらすようなものがそれにあたる。どうせ未来は予測できないのだから、幸運をもたらす黒い白鳥を積極的に狙おうということらしい。

本書、「ブラックスワン」は前作「まぐれ」よりも評判がよくて、ずっと日本語版が出るのを待ちこがれていました。待ちきれずに原書を読み進めてみたりしたが、日本語で読んでも難解な内容なので途中で止まっていた。難しい単語が多すぎた!

読んでみた感想は、「ブラックスワン」は前作以上の出来かもしれない。かなり期待して読んだけど、期待以上の出来。前作は主に金融業界の世界から不確実性の概念を語っていたけれど、今作ではもっと一般的な世界にひそむ黒い白鳥を取り上げている。特に、前作にはなかった“果ての国”という概念がおもしろい。新しい考えを持たせてくれました。