【書評】よその子


拷問読書

今週1冊目。累計64冊目。特殊学級の教師トリイが書いたノンフィクション。識字傷害のロリ、複雑な家庭の問題から暴力的になったトマソ、自閉症のブー、12歳で妊娠したクローディアなど4人の子どもを中心とした物語。自分は映画とか本で泣くことはまずなく、冷徹人間のレッテルを欲しいままにしてきたのですが、最後に生徒達が教室を離れるシーンは一瞬だけ涙で字が読めなくなりました。

トマソは幼い頃に両親を殺され、自分を厄介者扱いする里親にたらいまわしにされたあげく、誰に対しても憎悪を向ける子どもに育つ。ロリは幼いころの両親の虐待により頭を怪我し、どうがんばっても文字を読むことができない。重度の自閉症で言葉も喋られず、しょっちゅう奇声をあげるブー。成績優秀ながら12歳で妊娠してしまったクローディア。この4人が同じ教室で学ぶという形式で物語は進みます。

●魅力的な子どもたち

特に印象に残ったのが乱暴者のトマソ。自分を愛してくれる人が誰もいない状況で育ち、常に「いつか父さんが迎えにきてくれるんだ」と妄想を現実のように話しています。その純粋な妄想が泣けるし、識字傷害のロリの学習を助ける役を任命され段々と成長していく過程が面白い。

識字傷害を持ちながら、底抜けに明るいロリも印象的です。周りを思いやる気持ちが人一倍強く、勉強の意欲も高い。だけど、どれだけ頑張っても脳の傷害の影響で文字が読めるようになれない。それを怠けていると思われ担任の教師に叱られたり、他の生徒の前で本を読むように強制されたりする。作者のトリイがつきっきりで教えることになるのですが、最後に進級できないと分かった時の場面は読んでて一緒に泣きそうになります。

●現実でまったく通用しない学問

「フロイト心理学を研究し、この子どもたちの問題を解決できればどれだけいいだろう」というくだりが本書には出てきます。幼い頃に親からの愛情が不足したため情緒障害になってしまったのだ、といった心理分析が教室内ではまったく役に立たない。どうすれば子どもを良い方向へ導いていくかは、教室内での失敗や成功の連続しかない。

さらに子どもたちは、経験や勉強で分かったような接し方をしてくる大人を敏感に感じ取り警戒してしまう。ノンフィクションなので最後にすべてが解決してハッピーエンドともなりません。子どもたちの世界からは人間の本質がかいま見られます。文句なしのお勧め本。

ちなみに、この本を紹介してくれたブログは「分裂勘違い君劇場